韓国ゴルフビジネス視察レポート
視察期間 2024年9月24日火曜から9月26日金曜
滞在場所 ソウル江南、プサン
視察目的 シミュレーションゴルフは韓国が盛況で、ゴルファーとプロゴルフライセンス保有も日本を凌駕する勢いで増えている実態を視察し、日本と韓国のゴルフビジネスの違い、日本のゴルフビジネスにおいて参考にできることを探していくことを目的に視察しました。
1日目: エアコン付きゴルフカートの視察
初日は、エアコン付きゴルフカートに焦点を当てた視察を行いました。
韓国のゴルフ場は600施設と日本の2300施設と大きく差があり、会員権3億円、年会費500万円、ラウンド代3万円と言った富裕層向け施設が多く存在しています。
特に夏の暑さが厳しいため、快適性を追求したエアコン付きのカートが高級ゴルフ場で採用されています。これにより、他施設との差別化となり話題性とリピートを狙っています。
今回視察したカートの電力はリチウムイオン電池で提供されているため、通常のバッテリーよりも電気の持ちが良くまた、パワーも提供できる仕様になっています。
カード開発は韓国大手のリチウムイオン電池開発メーカーで、主要事業は車や携帯へのリチウムイオン電池提供。旧三洋のカード事業を買取り、昨年からカート販売を開始しています。
このリチウムイオン電池によりエアコン化の実現が可能になっています。
視察カートは富裕層を狙った商材のため、各シートが革製で座りやすく、ドリンクホルダーに冷却と暖房も備わっていました。導入コストは900万と高く、韓国市場だからこそのカートでした。
4人乗りエアコン付きは300-400万で販売されています。日本での販売だと100万近く高いものになりますが、差別化やリピートを狙うのであれば投資対効果を提供でき、ゴルフ場の付加価値として提供するには大きな魅力となるでしょう。
主なポイント:
– 快適なプレイ環境を提供するための設備投資
– プレイヤーのリピート率向上が見込まれる
– 輸送費やメンテナンスコストの考慮が必要
2日目: インドアゴルフ施設の視察
2日目は、釜山に今年オープンしたインドアゴルフ施設を視察しました。
シミュレーションメーカーの歴史
韓国ではインドアゴルフが非常に発展しており、最新のシミュレーター技術を駆使した施設が多く見られました。
シミュレーションゴルフは2000年ごろアルバトロス社が初めて作ったと言われています。
初めはどこのメーカーもベンチャー企業で始まっていて、開発を1から始めるメーカー、プログラムを買い漁って作る会社など、色々な方法でシミュレーション会社が軒を極めた。
ブームは2009年。カンナム界隈の富裕層からラウンド用シミュレーションの依頼が増えバブルがはじまり今に至っています。
2013年弾道測定センサーが、赤外線からカメラセンサーに変わったことにより精度がより高まりました。
さらにカメラエンジンが開発され、各メーカーが取り入れました。シミュレーションプログラムよりカメラセンサー技術が一番大事とされています。
QED、ゴルフナビ、カカオゴルフ、ゴルフゾン、ビックバンがセンサー技術を開発し、他メーカーはセンサー技術を購入してシミュレーションを作っている。
主要メーカーのポジション
シミュレーションメーカーは10社程度あり、ゴルフゾン、カカオゴルフ、QED、ワイジースポーツ、パオン、レッドゴルフなどが代表的です。
ゴルフゾン
韓国シェアNo.1メーカー。現在のシェアは60%と言われている。
黎明期は各社と機能などは変わらなかったが、マーケティング戦略を重視したことでシェア80%まで登り詰めた時期がありました。
マーケティング戦略として代表的なものは、1ヶ月間ゴルファーにゴルフ場を回ってもらい、スクリーンゴルフにコースが導入されていないか問い合わせしてされてないならラウンドしないと言ったゴルファーが沢山いると思わせて、ゴルフ場が焦ってメーカーにコース導入を依頼する流れを作りました。
また、スクリーンゴルフのプロを育成し、ゴルフを気軽に始められる流れを作り、ゴルフをしている優越感を演出するために高級感のある内装にこだわって他社メーカーに対して差別化を行なっていました。
現在はメディア機能のゴルフゾンメディア、ショップ機能のゴルフゾンマーケットショップ、実際のゴルフ場運営など、国内浸透するマーケット戦略を行っています。
すでに多額の資金があるので、良質なプログラムを早期に購入して他社に先行されない座組を作っています。
運営側のメリットは、顧客を早期に作れることではありますが、デメリットとして高額の装置に合わせて一回のラウンド利用代や有償アップデートでのコスト面と言われています。
カカオゴルフ
韓国のSNSであるカカオが立ち上げ、既に売却されていますが同名義で業界2位となっているのがカカオゴルフ。
特徴はみんゴルのようなゲーム性が高いラウンドモードと、予約システム開発によって他社よりも簡単な予約の取りやすさ、カカオという認知度があります。
釜山K Golf Academy
釜山はソウルから300キロの距離にあり、北のソウル、南の釜山として海洋関連産業で潤っているエリアになります。日本で言えば、東京と大阪の違いがあります。
K Golf Academyはオーナーのレッスンプロが地元行政や地主、メーカーと協力し、再開発という目的を持って新たなビルを作りスクリーンゴルフ(ラウンド利用)と室内ゴルフ(レッスン利用)を共存させています。
全20打席で、2フロアに分かれて運営しています。所属プロはオーナーを含めて6名。オーナーは10代からゴルフを始め韓国のプロゴルフ協会にあたるKOGAライセンスを保有しています。
今まで各地で7店舗の運営に携わり、成功した要素を盛り込んだスタジオにしているとのことでした。
料金体系は
①施設利用料
1ヶ月利用券22,000円 3ヶ月利用券63,000円(1回)
②スイング向上プログラム
(練習場利用料込み、K-Vest、パッティング分析、V1分析)左50分 右 30分
1回 16,000円、8,000円 4回 64,000円、 30,000円
8回 115,000円.56,000円 16回 225,000円、110,000円
利用期限:4回 = 1ヶ月、8回 = 40日、16回 = 3ヶ月
購入が多いのは、1回と4回のスイング向上プログラムだという。50分レッスン16,000円は日本の平均5,000円の3倍の価格体系。名の通った有名コーチが都内でレッスンしている価格相当となります。
レッスンはシミュレーションで弾道や距離、スイングを確認に合わせて、筋電反応をモニタリングするK-vest でスイングのエラーや基準範囲内かをパソコン上で確認しながら始まります。
体の可動が基準内であればブザーがなって音で知らせてくれるのは、良い機能でした。体をどこまで動かせば良いか体で理解できます。
体の動きに関してはタイトリストパフォーマンスインスティテュートTPIが提唱している12のチェック項目を利用しています。これにより、どのプロでもエラーに対する改善方法が明確になっていました。
現在月売上400万を超えていて、プサン内でのオーナー人脈の広さがわかります。Web広告はInstagram程度でほとんど費用をかけずに集客できています。
予約方法は、ネイバーや自社システムの利用が多く、カカオゴルフが業界2位になったのは、カカオから連携して予約が簡単にできることが要因でした。また、完全無人型の施設はほとんどなく、スタッフやプロがいるのでシステムよりも電話での受付も多くあるとのことです。
ロッカーは、どの施設でも豊富に準備しています。その理由は、韓国の住宅事情にあります。戸建よりもマンションが多いためにロッカーにクラブを預けることが主流になっています。ロッカーは1打席あたり20個での積算をしており、ロッカー代金は月2000円程度が相場です。
特に都市部では、手軽にゴルフを楽しむためのインフラが整っており、初心者から上級者まで幅広い層が利用しています。利用料金も手ごろで、予約システムや会員制サービスが充実していることが特徴的です。
主なポイント:
– シミュレーター技術の進化によるリアルなゴルフ体験
– 利用者の多様性(初心者から上級者まで)
– 短時間でのプレイが可能で、ライフスタイルに合わせた運営
3日目: パークゴルフの視察
3日目は、パークゴルフを視察しました。パークゴルフは、通常のゴルフと比べて簡便で年齢や体力に関わらず誰でも楽しめるスポーツとして韓国でも人気が高まっています。コロナ禍中にゴルフと比例して利用者数が増え、特に家族や友だちとの利用が多いとのことです。
施設はゴルフのような広大な敷地を必要とせず、低コストで設置可能であるため、地方都市や観光地での導入が進んでいます。また、ファミリー層や高齢者層に特に支持されています。利用料金800円とリーズナブルなので一般消費者には敷居の低いスポーツとなります。
パークゴルフ専用のシミュレーション施設も登場していました。平日昼にもかかわらずシニア層のグループがシミュレーションながらもパークゴルフで楽しんでいる姿がありました。ゴルフで得た装置技術をそのままパークゴルフに落し込んだ装置のため、画面を見ながら楽しめます。移動がないのでシニア層でも手軽に体を動かす施設となっていました。
主なポイント:
– 低コストでの設置が可能
– 幅広い年齢層に対応できる
– 観光地や地域活性化の一環としての可能性
結論
韓国のゴルフビジネスは、技術革新や快適性、幅広い層への対応を重視しており、日本市場にも参考になる多くの要素がありました。エアコン付きゴルフカートはゴルフ場の付加価値を高める要素として有望で、インドアゴルフ施設の導入は都市部での集客力を強化する可能性があります。インドアゴルフ施設成功要因が、プロという人に依存し、プロを中心にコミュニティがあるからこそ施設の価値があることは、日本でも同様だと感じます。パークゴルフは、地域社会の活性化やファミリー向けのレジャーとしてさらなる展開が期待できる分野です。
これらの視察結果を元に、ビジネスの展開を具体的に検討することが今後の課題となります。
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